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「どんな? ええのできた?」
身を乗り出して尋ねてくる彼に、手元にあった数十枚の紙の束を手渡す。
「うわぁめっちゃ増えとる。いつ描いたん?」
「そっちは昨日の夜。それはさっき」
一方、私はといえば、及川先生から約10年分の過去の写真を借りたその日から、どんなデザインが支持されやすいのか、どんな色合いが映えるのかを考察し、時間を見つけてはこうしてスケッチブックにアイデアを書き溜めていた。
そして、それらを定期的に陽に見てもらっている。
「これは? めっちゃ綺麗やん」
陽が紙を捲っていた手を止めて、1枚の絵を指さす。
「それね、自分でも悪くはないと思うんだけど、いまいちインパクトがないっていうか……」
「そっか。インパクトかぁ」と、彼は残念そうな声を出す。
数こそたくさん描いているものの、まだ納得のいく絵は完成していなかった。
体育祭で見せるのは、ベニヤ板36枚でつくる大きな1枚絵だ。綺麗なだけでなく見る人を惹きつけるような工夫が必要だ。
でも制作時間は限られているし、みんなで一緒に作るからあまり難しい技術を使うことはできない。おまけに使うのは絵の具でも鉛筆でもなく、ペンキだなんて未知数だ。
「描けば描くほど何がいいのか分からなくなってきた」
溜め息と共に弱音を吐き出すと、陽が心配そうな顔で私を見る。
「大丈夫やって。まだ時間はあるんやし」
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