一波乱

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「平気だよ。陽と蘭が抜けても、他にも人はいるんだし」  申し訳なさそうな顔をしている彼に対して、心配をかけないためにあっけらかんと言い放つ。  これまで作業を中心になって進めていたのは責任者の私だったが、私の言いたいことを感じ取って補足でみんなに指示を出し、隣でサポートしてくれたのは陽だった。  正直今日の作業に陽がいないのは不安だった。でも嘆いてもその事実は変わらない。何より、頼ってばかりでは情けない。  陽がいなくてもしっかりしないといけない。私が責任者なんだから。  帰りのSHRが終わって、荷物をまとめていると私の所へ陽がやって来る。 「じゃあ、委員会終わったらすぐに行くから」 「大丈夫だって。陽がいなくても何とでもなるよ」 「そんなにばっさりと言われると、傷付くなぁ」と彼は苦笑いを浮かべている。 「陽くん、委員会遅れるよー」  蘭が廊下から顔を出して陽を呼ぶ。 「ほら。早く行って」  蘭が声を掛けてきたタイミングで、無理やり追い出すようにして陽の背中を押した。  『陽がいなくても何とでもなる』――強がってそうは言ったものの、内心は不安だらけだった。  その不安を隠すように、早足で体育館へと向かう。
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