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「えっと。つまりお盆だから」
「まあ、この時期に現れ易いのは解る。誰もが、一応はお盆という風習を行うからな。認識する力が普段よりも高まる。勘違いも多いが、多くの人に祀られている霊は、確実にこの時期は認識されるんだよ」
「ーー」
つまり、歴史上の有名人ということか。侑平が思い浮かべたのは、安倍晴明だった。が、彼は関係ない時期にやって来たので、違うのか?
礼門は今でこそ大学で物理学を教える准教授だが、平安時代は陰陽師だった、千年以上生きる人物だ。他の歴史上の人物とも、顔見知りであってもおかしくない。
「だ、誰が」
来るんですかと、侑平は恐る恐る訊く。すると、礼門ががばっと侑平の手を握ってきた。な、何事だ!?
「そうだ!今年は君がいた。協力してくれ!!」
「協力?」
あ、何だかヤバい話題に足を突っ込んだらしい。そう気づいた時には、すでに後戻りできないものだ。それに深刻な礼門の顔を見てしまったら、断れるはずもない。
「あいつは、いわば影山みたいな奴。いや、過去に影山と結託していたこともある奴だ。俺の貞操に関わる。毎年毎年、この時期になると、人の布団の中に唐突に現れやがって」
「ーー礼門さん。本当に男性にモテますね」
今も勘違いされそうなほど、侑平の手をぎゅっと握っているし。
この礼門、とんでもなく美形なのだが、何故か男性にモテる。かつ、貞操を狙われる。影山は平安から礼門を狙う変態鬼だ。
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