0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
光原愛佳という女の話をさせてください。
光原愛佳は、私にとって唯一の、現実世界でのお友だちでした。私たちは本当に仲良しでした。動画周りの作業をしていない時間のほとんどは、彼女と一緒に過ごしていました。私たちは一緒に住んでいました。ルームシェアというやつです。
彼女はちゃんと働いていました。直接名前を聞くことは少ないけれど、規模としてはそこそこ大きい、企業向けの製品を作っている会社の渉外部で、バリバリのキャリアウーマンでした。国内外を飛び回っているので、彼女が部屋にいるのは週の半分いれば多い方でした。その合間に動画が撮れるのでいいのですが、やっぱり寂しかったです。私の動画が不定期なのも、それが原因でした。彼女の不定期な不在に合わせて、企画して台本作って録画して編集して、ですから。
ああ、彼女との出会い――彼女と出会ったのは、私が大学生だった頃です。彼女はサークルの二年先輩でした。
彼女の得意料理は金平牛蒡でした。「母親の味が忘れられなくて」と、はにかみながら、よく振舞ってくれました。彼女は首を傾げて、何が違うんだろう、と悩むのですが、私にはいつも美味しく感じられました。
ルームシェア、と言いましたが、私の中では同棲に近いと思っていました。
光原愛佳は死にました。
理由は私が殺したからです。
(殺害理由)
最後までご覧いただきありがとうございました。
ごきげんよう。さようなら。
***
二十四日未明に岐阜県の山中で発見されていた遺体の身元が、五島桜智さん(24)と断定された。五島さんの家宅からは、YouTubeに二十三日に投稿された、光原愛佳さんを殺害したことを告白する動画と同一の原稿が発見された。
最初のコメントを投稿しよう!