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ここはカンザス州のどこかの、砂漠のどこか。
照りつける太陽に焼かれた砂が、様々な形の丘をつくりあげて波打っている。
その波打つ砂の丘の砂漠に、空(くう)を揺らす爆音が響き渡る。
それはダットサン・ハードボディのピックアップ。赤地のボディーの上、ボンネットにファイアーパターンのカラーリングが施されている。
エンジンは3リッターV6エンジンを搭載。もちろんノーマルではなくがちがちにカスタムがほどこされて、もともとなかったターボをつけたりして、500馬力を叩き出し。
足回りもそれに応えるようにカスタムし、砂漠を飛ばすのに適したハイリフトで車高は高くなり。ぶっといオフロードタイヤの足が生えたようにも見えた。
そんなダットサンのハードボディの4つのタイヤは激しく回転し砂を巻き上げ轟音をがなりあげて、丘を駆けあがって。ひとっ飛び。
「WOW!」
4点式シートベルトで身をかためたドライバーのドロシーは叫び、興奮しきりだった。
栗色の髪と目をもち、白いTシャツにジーパン、黒のコンバースのハイカットの、このセブンティーンのアメリカンガールは、ヘンリー叔父さんの愛車だったピックアップをもらいアルバイトで稼いだ金をカスタムに注ぎ込んで。
ヘンリー叔父さんはもちろん、エム叔母さんを仰天させ。
そんなドロシーは砂の丘を飛んで、まるで太陽に向かって飛んでいるような快感をおぼえて。
「わんわんッ、わおーん!」
愛犬のドーベルマン、トトも興奮して叫びまくった。
ダットサン・ハードボディは変に向きを変えることなく、ウィリー気味に飛んでうまく後輪から着地。激しい衝撃がドロシーとトトのケツを蹴るようだったが、それも快感で。
「It a cooooooooooooooooooool!」
「わんわんわんッ!」
ドロシーとトトは興奮して叫びまくって。右足は思いっきりアクセルを踏んづければ、ダットサン・ハードボディは野獣のような雄叫びを上げて、4つのタイヤで砂を巻き上げながらかっ飛んでゆく。
「すっげーな。トルネードだよマジで」
「女だてらによくやるぜ」
同じピックアップに乗っている男子どもは、砂漠をかっ飛ぶドロシーのダットサン・ハードボディを眺めながら、つまらなさそうにつぶやくのだった。
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