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彼らはピックアップに乗ってはいるものの、砂漠をかっ飛ばすとか興味なく。ガールハントのための小道具として使うことをもっぱらとしていた。
「いい女なのによ、もったいねえ」
ひとり、リーゼントを決めた不良風のガチャがつぶやく。
このセブンティーンの不良はジェームス・ディーンを気取り、愛車のフォードのピックアップでガールハントにいそしんでいた。
そんなときに、友達と一緒だったドロシーと出会い、ハントしたのだが。
「じゃあさ、一緒に砂漠を走ろう!」
などと、ドロシーは目をキラキラさせて言うとともに、ダットサン・ハードボディを見せられて、口あんぐり。
(見た目だけだろう)
と高をくくっていたのだが、侮れないもので、ドロシーは嬉々として砂漠をかっ飛ばす。
すぐにやめるだろうと思っていたのも、思いっきり当てが外れた。
舗装された道で愛車をとめ、他の仲間たちはハントした女子たちを連れてドライブに行きたがってうずうずしている。
「おい、もうあきらめろ。他の女探せよ」
と言うが、ガチャは忌々しく唾を吐き。
「F○cK!」(クソ!)
と叫んだ。
「やめなって。あの子、仲間内でトルネード・ドロシーって言われてるくらいの飛ばし屋だから」
他の女子が言う。
「マジかよ」
ガチャは両手を広げる仕草をし、眉をひそめる。
ふと、足元にこぶし大の石があるのを見つけて、砂漠を歩く。
相も変わらずダットサン・ハードボディは爆音あげて砂漠をかっ飛ばしている。
タイヤの巻きあげた砂は風に吹かれて、どこかへと飛んでゆく。
八つ当たりに石を拾い上げて、遠くに見えるダットサン・ハードボディの方に向けて投げてやった。
石はむなしく下降線を描いて、砂漠に落ちた。
「イチローにホームラン打たれるぜそんな投げ方じゃ」
仲間たちは助手席に女の子を乗せて、ガチャをほったらかして愛車で走り出した。
「おいマジかよ、待てよ!」
ガチャは叫ぶが、もう辛抱たまらんと仲間たちは駆け去って行ってしまい。ひとり残されてしまった。
「Goddamn!」(ちくしょう!)
切れたガチャは愛車のフォードのピックアップに乗り込み、砂漠を駆け出す。そうかと思えば、サンバイザーを下げれば、そこには、拳銃……。
拳銃を乱暴に掴み取り、左手に持って右手でハンドル操作をする。
「あ、やっと走り出した」
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