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ドロシーはガチャのピックアップが走り出したのを見たが、ウィンドウからガチャが身を乗り出しているのをも見た。
「What!」
身を乗り出すガチャの左手には、拳銃が握られ。自分のダットサン・ハードボディに向けられている。
「F○ck you b○tch!」(クソ女!)
ガチャはドロシーを口汚く罵り、引き金を引こうとした。が、砂の丘波打つ砂漠での車の運転は、上がったり下がったりと不安定で狙いが定まらない。ウィンドウから身を乗り出しているからなおさらだ。
「Murder!」(人殺し!)
まさかガチャが自分を撃とうとするとは思わなかったドロシーは驚き。トトは、「うう~……」と、揺れる助手席で踏ん張りながらフロントガラス越しにガチャに唸る。
「まさかこいつ、シリアルキラーで女を屍姦する趣味ぃ!?」
そんなつもりでドロシーに声をかけたのだろうか。真偽のほどはともかく、逃げるしかない。
フォードのピックアップが迫る。ドロシーはハンドルを回し、アクセルを踏み、ダットサン・ハードボディをドリフトさせながらそのテールをガチャに向けた。
500馬力を叩き出す3リッターV6ターボエンジンは吠え猛り、距離をぐんぐんと開ける。
「くそ、マジで速え。だがこいつにはかなわねえだろッ!」
減速しどうにか体勢を整えながらガチャは狙いを定めた。
と、その視界の先に、あらぬものが。
「Tornado!」
それがトルネード(竜巻)だとわかるやいなや、照りつける太陽が急に雲に隠されて、風も出て。陽光照りつけていたのがうそのように薄暗くなる。
それでいて砂漠の砂が竜巻の突風に巻き上げられ。なにかサタンでも降臨しそうな不気味な雰囲気を醸し出していた。
「やべえ」
ガチャは慌てて体を車内にひっこめ、フォードのピックアップをUターンさせて舗装路に逃げ込み。アクセルを踏んで竜巻から逃げた。
竜巻を見たのはドロシーも同じだった。
バックミラーを覗けば、ガチャの車は逃げてゆく。
「F○ck!」
ドロシーは忌々しく呻き、トトも同じように「うー」と唸る。
ハンドルを急回転させ、アクセルを踏めば。ダットサン・ハードボディは砂を巻き上げドリフトしながら素早くUターンし、今度は竜巻にテールを向ける。
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