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だから私は久しぶりに摩耶訶思の力を借りて、キャサリンをもてなしてやった。
仮の召使いが供する食事に舌鼓を打ち、話をしながら声をあげて笑うなど、いつ以来のことだろうか。
どうかこのまま、明日という日が来なければいいのにとさえ、そんな想いがこの心を過るとはまったく予想すらできていなかった。
あれはほんの昨日のことだったろうか、なぁ、キャサリン。
お前と出会った日のことを不意に思い出したよ。あの晩、私はどうしてもお前を手放したくなくなって、その首筋に牙を立ててやったんだったね。
お前は躊躇することなく私を受け入れた。ああ、分かっていたんだろうよ。お前の瞳に私は映っておらずとも、この冷たい頬にあの小さな手が触れた瞬間、お前は私の正体を悟ったはずだ。
そして、お前の兄が決して迎えになど来ないことだって、お前には分かっていたさ。
私と結ばれ、摩耶訶思の力だけでなく、瞳の中に光さえ宿したお前は、強く気高く美しく、いまもこうやって私と共にある。
私とならば、こうして永遠を手に入れられることも知っていたのだろう。
空恐ろしいものだな、キャサリン。お前はさらに生きながらえるため、このように私を踏み台にするのだから。
そうはさせじと抗う気など起きはしなかったんだよ、キャサリン。だが、覚悟をしておくがいいさ。お前がこの先味わう孤独は、数百年ではない、千年という長きを超える。
お前という伴侶を見つけるまでの私がそうだったように、永遠に続く薄暗い孤独をたった一人きりで抱きしめて彷徨い続けるのだ。
キャサリン、私はお前に出会えて幸せだった。
お前はこの先、誰かに出会えるだろうか。それは何年先のことだろうか。いや、きっとそんな日は来ない。
自らの過ちを悔やみ、私の亡霊を求めて哀しみに打ち拉がれるがいいさ。永遠の孤独という底のない深淵を堕ち続けるのだ。
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