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最近、勇者が来ない。
毎日毎日、飽きもせずにやって来ては返り討ちにしていたせいだろうか?
とうとう諦めたか?
「ふむ……つまらん」
玉座の肘掛に頬杖をついて、独りごちる。
勇者が来ている間は暇潰しになっていたが、来なくなると時間を持て余してしまう。
奴が来る前はどんな風に過ごしていたか思い出せない。
少し勇者との遊びに夢中になり過ぎたようだ。
「来ないのならばこちらから行くまで」
玉座から立ち上がると控えていた同族の者達がざわめいた。
元々、血の気の多い奴等だ。
魔王が立ち上がれば、好きに暴れる事が出来ると喜んでいる。
そんな同族達を置いて薄暗い城から外に出る。
大きな漆黒の翼を羽ばたかせたらあっという間に深い森を抜ける事が出来る。
ただの人間がこの森に入れば忽ちに方向感覚を失い、魔物の餌食になる。
そんな森を抜けて城まで辿り着いたのは、あの勇者だけだ。
森の上を自由に翔んで、勇者の気配を探る。
一度会った者ならば何処にいても探し出す事が出来る自分のこの力はこういう時はとても便利だ。
暫く森の上空を旋回して気配を探ると、勇者の気配を感じ取った。
森の中に誰が建てたか分からない古い小屋が見える。
その近くに降り立つと、羽を隠し黒のローブを頭から被って小屋の戸を叩いた。
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