たとえば生命に使われる時間の偏重

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たとえば生命に使われる時間の偏重

 教壇の上では、相変わらずの怠惰な授業。  教室の外には、相変わらずの不変な風景。  教室の中には、相変わらずの居眠り生徒。  その中で、珍しく俺は起きている。覚醒しきっているわけではないが、まどろみに身を任せているわけではない。ただ、何となく、この身体を現実に押しとどめている。  つまらないわけではないが、結局のところ面白くはない。  ただ、それだけのこと。  別に、周囲の流れに身を任せ居眠りに興じるのも悪くない。  だがやはり、悪くないだけで良くないことは知っている。知っているし、解かっている。  気も漫(そぞ)ろにペン回しをしていたが、失敗したのでその手を止める。  机の上、教科書に覆いかぶさるようにしているノートには何も書かれていない真っ白のページ。統一された緯線の上に、制御を乱すような一文を書いた。 『たとえば生命に使われる時間の偏重』 「何書いてんの……、って何それ?」 「なっ」  びっくりした。  横の席からかけられた声。意識を完全に紙面へ飛ばしていたので、不必要に驚いてしまった。 「……意味分かんないんですけど」 「……自分でもよくわからんし」 「はぁ?」     
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