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「おかあさん、どうしたの? もうすぐかえってくる?」
『秋那、秋那はお家に帰ってきてる?!』
おかあさんのこえが、へんだ。いつもとちがう。おこってるのともちょっとちがう。
「アキはおかあさんとかえってくるんでしょ? いないよ」
そういうと、おかあさんはなにもいわなくなってしまった。なんだろう、すごくへんなかんじがする。
『春真は、そのままお家にいてね。お母さん、もう少し遅くなるけど、お父さんにも電話して、早めに帰るようにお願いするから』
「アキ、どうしたの?」
『春真は心配しなくていいから、お願いだから、お家にいてね、また電話するからね!』
でんわがきれた。
アキになにかあったんだ。
「アキ、」
おうちのかぎをおかあさんのひきだしからとって、かぎをしめていえをでた。
「アキ、……アキ!」
アキ、いなくなったんだ、きっとそうだ。
かぎをにぎりしめて、アキがすきなところ、ぜんぶさがしにいこうとおもった。
はしって、はしって、
「アキ、どこにいるの、」
ひとりでこんなじかんに、いえからとおいところに、
「っ、アキ、アキ!」
アキ、どこにいるの? オレからはなれてどっかいなくなっちゃうの?
ゆうまのいえなんてわからない。でも、オレたちはふたごだから、アキのことなら、オレはわかるんだ。
「アキ」
アキとオレがだいすきなばしょ。
ようちえんのうらにある、ひろばのおおきな、きのあなのなか。
ようちえんのバスのまどから、まいにちそとをみていたのを、がんばっておもいだす。
ようちえんにいくには、このまままっすぐいけばだいじょうぶ。そのまま、おおきいおにわのあるおうちのところをまがると、ようちえんにいける。
はしって、とまって、またはしる。あのおうちがみえた。もうすぐようちえんにつく。
「アキー!!!」
「――っ――」
ちいさくだけど、こえがきこえた。アキのこえが。
ようちえんのうらのひろばはくさがたくさんはえてて、すべって、ころんだ。でも、そんなのいいんだ。
おおきなきがみえた。ぜんぶのちからをだして、よんだ。
「アキ!!!」
きのあなのなかには、めになみだをいっぱいにした、アキがいた。
「は、る」
「アキ……アキ、良かった」
からだがからっぽになったみたいに、しゃがみこんだ。アキのからだをギュッとする。
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