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その唇を開放した頃にはすっかり辻本の息は上がり、潤んだ瞳でジっと俺を見つめる。
「…なんで榛名くん、機嫌悪かったの?」
やっと甘い雰囲気が流れたかと思えば、ふいに問いかけられたそれに思わず「はぁ?」と眉が寄る。
「…本気で分かんないの?」
「うーん…やっぱりサンタコスが原因?」
「…分かってんなら聞かないでよ」
「でも、なんで?ちゃんと胸は隠したよ?」
「はぁ?胸さえ隠せば何出してもいいと思ってんの?」
「そういうわけじゃないけどっ!でもっ…!」
「…でも、なに」
低い声と冷たい視線で先を促す。
辻本はムっとした表情を浮かべながらも、気まずいのか視線を逸らしてからゆっくりと口を開いた。
「…榛名くんに可愛いって言ってもらいたかったんだもん」
「……」
「…なのに、一回も言ってくれないし」
「……」
「ねぇ、分かってる?今日クリスマスだよ?」
「…分かってるよ」
「年に一回なんだよ?今日しか希子サンタ見れないんだよ?碧くんだけの希子サンタだよ?」
「……」
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