死朽病

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 私がその病に罹ったのは十八になったばかりの、花も永遠を歌う錯覚すら抱かせる、最も美しい時代を謳歌している年の頃でございます。  両親に愛され蝶よ花よと育てられた私は、母に似て自らも誇れる美貌に生まれつき、父は贈られてくる花と手紙を破り捨てるのが日課になっておりました。  豊かな黒髪に透き通る白い肌、小さな手を一動すれば誰もがうっとりとため息をつき、紅さした唇を緩ませれば誰もが頬を赤らめて微笑んでくれました。  果ては化粧品の広告に出てほしいと頭を下げに来た者がいるほどです。  家柄も財産も不自由無く、将来の不安の影すら無い、それこそ明るい未来ある娘のはずでございました。
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