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ヒュウと風が町を切り裂いた。
木枯らしは冬を連れてきては、幾ばくかの人の魂を連れ去っていく――ここは花の都、京都。学術都市ととしての京都を切り出すように、近隣の大学に通う同年代の男女で賑わう地下鉄今出川駅の、下り線のホームの端。そこに、喧騒も視界に入らないという風に思い詰めた顔をして立っている大学生がいた。
「……あら」
珈琲店曼陀羅真主のマリアは嘆息する。この時期になるとこのような人間が多い。それだけマリアの仕事も増えるというものだ。
「あの子は……そうねえ。アクアマリンが御好みかしら。それともダイヤモンドかしらね」
マリアは指を空気に滑らすて、秘密の真言の魔法陣を描く。
「ふふっ」
マリアは悲しげに笑った。
「おかしいわよね。魔女の血を引く菩薩だなんて」
それでもマリアは知っている。これは必然であって、運命の嫌がらせではないということを。
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