少年、君は

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少年の母親は麻薬常習犯だった。過去に補導された経験もあったそうだ。執行猶予期間中この島を訪れた際、少年の父、そして私の友人に当たる男と関係を持ち、この子を孕んだ。異例なのは明らかだ。常習犯でありながら執行猶予など着くはずもないのだから。 彼女がこの島に拠点を置いた事を把握していたであろう警察も、小さい島が故に注意を集中させていなかった。結果、事件が起こった当時は対応に遅れ、犠牲者を出してしまった。逃げ場のない島で、彼女は呆気なく逮捕された。犯行を認め、本土の警察署へと搬送されて行った。  彼女がこの島に来た時から既に、こうなる運命だったという事だ。嫌な話だ。 「二度と来るな!」 突然後ろから聞こえた怒声と、チャリン、と数枚の金属が散らばる音に振り向いた。店前に出された野菜や果物が乗った段ボールの陰から腕が見える。その周りに散らばっているのは小銭だ。 立ち話を中断して、様子を見に少し近寄った。腕から、段々と身体全体が見えてくる。完全に見えた頃には、その悲惨な姿が目に焼き付いていた。地面に接している皮膚は灰色に汚れ、石肌に擦れた部分からは赤黒い粘り気のある血が滲んでいる。 ああ、また、起こってしまった。 島唯一食料を調達できるのは、島の中央に位置するこの個人経営のスーパーだけだ。店主の人柄の良さは島中が知る。とても声を荒げるような人物ではない為に、毎度この嫌な役を請け負っているのが不憫でしょうがない。     
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