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通学路が賑わう時間は、歩いて宅訪問をする。そうする事で、子供達が家から出てくる様子を見たり、元気な挨拶を交わすことが出来るからだ。
通学路に出ると、あちこちから挨拶が私に向かって飛んできた。私の隣に走り寄ってくる子、振り返る子、叫ばんばかりの大声で私を追い越しながら挨拶する子。色んな様子が見れて、一日の中で、一番癒される瞬間だ。
すれ違う子供達の数がみるみるうちに減り、ひと気のなくなった通学路をのんびりと散歩がてら歩く。陽気が、島を流れる風に乗って心地良い空気となって私を包んだ。
ふと、背後に気配を感じた。後ろを振り向くと、一人の少年が立っていた。先程までこの通学路を埋め尽くしていた少年達と同じ、でもどこか違う雰囲気を持った少年。元気で活発な彼等との明らかな違いはその余りに細く儚い体格だろう。風が吹くと砕けてしまいそうな程に繊細な肉付きから目が離せなくなり、暫くの間彼を見ていた。
島の人間にこの子の存在を知らない者はいない。それは勿論、私も含めて。ただ、こうして目の前でハッキリとその姿を捉えたのは初めてだった。縒れた長袖のシャツに裾のほつれた長ズボン。目にかかるほどに伸びた切り揃えられていない前髪は彼の独特の雰囲気をより一層引き立たせている。
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