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「さあね。あなた誰にでもヒューマノイドってほざくの控えなさい。あなたがヒューマノイドをどう定義するかも興味ないし。
でもさ、もしあの子がヒューマノイドなら私だって同情してもう少し優しいお姉さんくらい演じてたかもね」
「教えてくれないか? アロイスは」
「室長に聞きなさいよ」
「鉾ノ木さんは何も…」
「『補助』員のあんたなんかに話すわけないか。私だって余計なことは何も考えたくないのよ、どうでもいいじゃない。現状を受け入れなきゃ生きていけない。私には仕事の続きがある。7分後には律儀にこの手と足でアロイスのおやつを下げに戻るわ。あなたはあなたの仕事があるでしょ。観察ですって? あはは、大事な検体ほっといて大丈夫? あなたが朝から観察室に入り浸ってるせいで、たぶんオートロックの上位ステイタスはさっきから解除されたままだと思うのだけど」
「知らなかった!」
僕は知らないのではない。忘れているのだ。心地よさに囲まれて怠けたがる脳が、生きるために不都合な全てを深い階層に仕舞い、鍵をかけている。
「アロイス!」
アロイスのことまで失念するつもりはなかった。慌てて駆け戻ったが観察室にアロイスの姿はなく、子ども部屋の景色だけが再生されていた。
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