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研究所のセキュリティシステムはまだ作動していないようだ。 僕は室長に連絡を取り、さっきまでの状況を、躊躇いがちに伝えた。感情的になって大きなミスをしてしまったのだ、こんなことなら大人しく疑問をもたないでいるのがよかった。退職届とはどうやって書くんだ? 検索しておかないと。そうさ元々僕に研究所勤務なんて荷が重かった。夢を持てた少年時代に戻りたかった。 「室長、申し訳ありませんでした」 駆けつけた室長に深く頭を下げ続けた。こんなときに室長に顔を向けられるほど厚顔でいられなくて。 「気にしないで。芦原の責任じゃない。それに私が戻ってくるまでの間、研究所は誰の入退室ログもなかった。アロイスはまだ建物のどこかにいる」 「連れ戻されたアロイスは罰を受けるのですか?」 「勘違いしてない? 私は監獄の看守じゃない。だから当然罰もないわ」 「セキュリティーを無断で越えるとレーザーで撃たれることは? まずい、僕、探してきます」     
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