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更に付け足せば、この怪談の話型は海で飛び込みをしていて溺死した少年を撮った最後の写真に、引きずり込もうとしている無数の手が写り込んでいたという、あの有名な怪談のアレンジにも思えなくもない。創作の可能性は十分にあるはずだった。
しかし、それでも私はなぜかこの怪談と古新聞の記事が気になってならなかった。
(そういえば、本棚にあったはずだ。)
私はそれを確かめるために、家の中の自分の部屋に向かった。そして、部屋にある本棚から一冊の古くて粗末な本を取り出した。
『I県●●地方の伝説』
何年か前、古本屋のワゴンセールで見つけたものだった。 著者は永らく高校で日本史を教えており、休日に郷土の歴史や伝説を集めて研究していたものを自費で出版したのだった。
この本のタイトルをある●●地方には広海君が住んでいた山間部のち町も含まれている。何度か本をめくり、探していた記述を見つけた。
その記述は以下のようなものだった。
●●地方の冬は雪深く、厳しい気象条件の土地である。今でこそ米どころとされているが、それは明治以降のたゆまない品種改良により、寒冷地に適した稲が開発されてきたからのことである
元々ベトナム、タイなどの東南アジアの温暖な地域の作物である稲は寒冷な東北で栽培するのに適した作物ではなかった
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