0人が本棚に入れています
本棚に追加
新月の夜と吹雪の日に、この碑に近付いてはいけない。それは生きながらにして餓鬼道に落とされた、飢饉の犠牲者の霊が鬼となり、獲物を探しているからである。古老によるとその鬼は
『○○?(汚れのため判別不可能)』と呼ばれているそうだ。
私はこの記述を読み終え、背筋に寒気を感じた。更に気になることがあったので確認するために、スマートフォンで検索を始めた。広海君の遺体が発見された寺の名を入力した。その寺のなかには、大正時代に建立された慰霊碑があった。
その慰霊碑は天明の大飢饉だけでなく、江戸期やそれ以降の時代で不作を端に発した飢饉の犠牲者全体を慰霊する碑のようだ。
私の中で何となく話が繋がってきたのを感じた。もちろんそれは、あの子ども向けの怪談本や●●地方の伝説を記述した本が事実を述べているという前提と、広海君がA君と同一人物であるという仮定の上に立った私の想像に過ぎない。
広海君は心霊写真を撮るために、寺の墓地に行った。彼は古老に伝わるあの伝説を知っていた。友人に言っていた秘策とは、吹雪の日に慰霊碑の付近で写真を撮影するということだった。
もちろん吹雪の中での撮影なんて出来るものではない。しかし広海君はきっと吹雪の直前で撮影を切り上げて帰路に着けば問題ないと考えたのだろう。それで何らかの霊の類いが写り込むと踏んだのだろう。
最初のコメントを投稿しよう!