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I県内の山間部にすむ小学五年生の山中広海君(仮名)がある一月の放課後に、雪景色を撮影するためにカメラを持って出掛けた。しかし出掛けて一時間もすると、天候が急変して、猛吹雪になった。
両親と祖父は勤めに出ていて家に居たのは、広海君の二歳上の兄だけだった。兄は広海君の身を案じながらも、吹雪が酷くて外に出て探すこともできなかったので父親の職場に連絡をした。
連絡を受けた父親も、吹雪で職場から動くことが出来なかったため、集落の世話役に連絡して相談した。しかし世話役もさすがに猛吹雪のなかでは探すこともできなかったので、天候が回復してから捜索することで話が決まった。
山中君の兄が連絡してから二時間以上して、ようやく猛吹雪が少し治まったため
両親と世話役と近隣の人で広海君を探し始めることが出来た。 しかし捜索は最悪の結果となった。
集落の外れにある寺の墓地で変わり果てた広海君が発見されたのだ。広海君は立ったままの姿勢で凍りついていた。
広海君の遺体が発見された寺は集落のほとんどの世帯が檀家となっていた寺だった。
しかしながら山間部の小さな集落であったため、檀家数はたかが知れていて、寺から得られる収入では住職一家の家計は成り立たなかった。
そのため住職は農協の仕事をしながらの兼業だったし、妻も日中は少し離れた街のスーパーマーケットでパートをしていた。
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