吹雪のなかに消えたものは?

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よくある怪談のストーリーだと、写真屋が現像したのを渡すのを拒否したり、また見ても決して驚かないように、見た物を忘れて気にしないようにと話すくだりがある。しかしこの話では特にそのようなことは記載されていなかった。 ただ写真屋の主人は気味悪そうにして、無言で現像された写真を遺族に手渡した。 フィルムは替えたてだったようで、現像されたのはわずか六枚であった。 一枚目は寺の山門の写真であった。二~五枚目は遺体が発見された墓地の写真だった。 これらは特に異常もない、普通の写真だった。一枚目の山門の写真では青空も写り込んでいた。その後天候が急変して吹雪になるとは想像もつかないような青空だった。 二枚目から五枚目の写真も特に何ともない写真だ。一枚目のように青空こそみえないが、あまり気味の静かな墓地の景色が写されていた。 そして、六枚目の写真....... そこには無数の黒い手が大きく写り込んでいた。まるで目の前の撮影者を掴もうとしているかのように、黒い手は伸ばされていたのだった。 この怪談の主人公のA君が記事の広海君と同一人物であるとは限らない。更に言えばこの話自体が心霊本のライターの創作である可能性も大きい。いやそう考える方が普通だろう。広海君の記事を元にして怪談にした可能性も十分にあり得ることだ。     
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