3.企画開発室に異動になった!

2/3
249人が本棚に入れています
本棚に追加
/103ページ
午後2時ごろ、コピーをしていると、岸辺さんがやってきた。あれからよく会うのも何かの縁かしら? いや、岸辺さんが気付いてくれるようになったからかもしれない。 「昨日はごちそうさまでした」 「いや、割り勘だからお礼は半分でいいよ」 「でも、楽しくておいしい食事でした。コピーを代わりましょうか?」 「いや、横山さんが終わってからでいいよ。特に急いでないから。でもコピーばかりしているみたいだね」 「皆さん忙しくて、コピーをする人がいないから、仕方ないです」 「この間、講演会に行ったら、コピーをしっかりできることも大事だと言う話を聞いたよ」 「どんな話ですか」 「今では超有名な日本人の外科医で難しい手術ができるので、米国と日本を行ったり来たりして引っ張り凧だとか。そのいきさつを聞くとアメリカンドリームの典型的な話だった。 若いころ、その人は私立大学の医学部出身で日本の大学では研究をろくにさせてもらえないので奥さんと米国の著名な外科の教授の研究室へ留学したとのこと。留学先でも、給料が少なくて生活に苦労したが、教授の文献のコピーをいつも進んでしていたそうだ。 ぶ厚い製本してある医学雑誌をコピーするのは大変で、いびつになったりしやすいから、できるだけきれいなコピーを心がけていたとか。その真面目さ丁寧さに教授が気付いて、手術の助手をさせてくれたそうだ。 手術の助手をやっていると、器用さを認められて、難しい手術の助手もするようになり、ついに教授の代りに手術をするまでになったとか。何でもないコピーでも一生懸命にしたことが今日につながっているとしみじみ話しておられた」 「コピーでもおろそかにしてはいけない。ためになる話ですね」 「横山さん、パソコンはできないの?」 「パソコンは社内システムの入力のお手伝いをしていますし、Word、Excel、Power Pointの基本的なことくらいはなんとかできます」 「それだけできれば十分だ。僕もその程度だから」 コピーが終わったので席に戻った。なぜ岸辺さんは私にパソコンができるか聞いたのだろう?
/103ページ

最初のコメントを投稿しよう!