267人が本棚に入れています
本棚に追加
「こんな高熱が出ているのに行かなきゃダメだ。今日はもう無理としても、明日の朝には行かないとだめだ。咳は出てないから肺炎ではないとは思うけど」
「すみません」
「いつも携帯している解熱鎮痛薬があるから、これを飲んでみて」
私はしぶしぶ薬を飲んだ。もともと薬は好きな方ではない。しばらくすると眠くなって眠ってしまったみたい。
目が覚めると、岸辺さんも壁に寄りかかって眠っていた。仕事で疲れているのにわざわざ来てくれたんだ。
「岸辺さん、すみません、眠ったみたいで、少し楽になりました」
「ごめん、僕も眠っていたみたいだ」
「熱を測ってみよう」
熱を測ると37℃まで下がっていた。時計を見るともう10時だった。
「買ってきた弁当を食べないか」
「いただきます。今日は少ししか食べてなくてお腹が空きました」
「お湯を沸かしてお茶を入れてあげる」
「すみません。お願いしていいですか」
岸辺さんは電子レンジでお弁当を温めてくれる。お茶を入れて二人でお弁当を食べた。二人共、お腹が空いていたので夢中で食べた。
岸辺さんは手を洗ってから、持ってきたリンゴとキュウイの皮を剥いてカットしてくれた。
「器用ですね」
「これくらいできるさ」
「ありがとうございます。男の人に果物を剥いてもらったのは初めてです。いただきます。・・・・おいしいです」
「よかった。早く元気になってくれ」
「あのーお願いがあるんですが、聞いてもらえますか」
「いいよ。何?」
「心細いので、どうか今晩泊まってもらえませんか? お布団はもう1組ありますので」
「ううん、心配だからそうしようか。部下の面倒を見るのも仕事のうち、室長にも訪問すると断ってきたから、いいだろう」
岸辺さんにそばにいてほしかった。聞き入れてもらえたので嬉しかった。それを聞くと、私は少しよろけながらトイレに立った。
部屋にもどると岸辺さんがめずらしそうに部屋の中を見回している。私の部屋は家具も少なくてさっぱりしている。小さな机の上にラップトップのパソコン、また、本箱にパソコンの雑誌と単行本。
最初のコメントを投稿しよう!