6.風邪でダウンしたら見舞いに来てくれた!

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よろけながら押入れから布団を出してあげる。それを岸辺さんは私の横に少し離して敷いた。狭い部屋は布団でいっぱいになった。 「すみません。眠らせて下さい」 布団に横になるとメガネを外してすぐに眠ってしまった。 夜中に気が付くと、明かりが落としてあって、岸辺さんは布団で眠っていた。岸辺さんに寝顔を見られたに違いない。それに腕時計を外していたので、左手首の傷跡も見られたかもしれない。でもそばで寝てくれているのでとっても心強くて安心できる。ありがたい。 額に手を当てられたので目が覚めた。岸辺さんはもう起きていて、すでに布団は押入れの中にしまわれていた。はっきりみえないのですぐにメガネをかける。 「おはようございます。泊まっていただいてすみません。よく眠れてだいぶ良くなりました」 「まだ、熱があるみたいだから、9時になったら近くの医者に行こう」 「すみません。行って診てもらいます」 「もう少し横になって休んでいて、8時になったら冷蔵庫の中のもので簡単な朝食を作るから」 8時になったので、岸辺さんは牛乳を温めて、パンをトーストして、卵をゆでて、簡単な朝食を作ってくれた。男の人の作る朝食は本当に簡単なものだけど、私はすっかり食べた。食べないと風邪はよくならない。 それから岸辺さんが9時にタクシーを呼んでくれて、私が行ったことのある駅前の医院に連れていってくれた。診断は風邪だった。薬を貰って、コンビニによって昼食用にサンドイッチやおにぎりを買って、またタクシーを呼んで帰ってきた。 帰るとすぐに貰ってきた薬を飲ませて、布団に寝かせてくれた。私はしばらく眠った。 昼前になると、熱もほぼ平熱まで下がってきたので、岸辺さんは昼食を食べたら帰ると言う。申し訳なくて、もうこれ以上は引き留められない。 私がサンドイッチを、岸辺さんはおにぎりを食べていると、玄関の鍵を開ける音がする。母が入ってきた。岸辺さんは誰かと驚いている。 「母です」 「はじめまして、岸辺さんでしょ。美沙の母親の野上咲子です。娘がお世話になっております」 「はじめまして、岸辺です。横山さんが熱を出して会社を休んでいたのでお見舞いに来ています」
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