暴言 アヤミ

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周囲の人はタエコさんがいきなり失踪したように思っていたかもしれませんが、私にはなんとなく予感めいたものがありました。 いつも長電話をしていた相手の元に行ったのだと思いました。でもそれをミウラさんには言わなかった。なんとか自分で捜そうと思ったんです。 ミウラさんの呼びかけじゃ絶対に戻ってこないだろうし、私が捜したほうがスムーズだろうと。 タエコさんがよく口にしていた人物の名前や喫茶店の名前などを覚えていました。 毎日学校から帰ると電話帳や104で思い当たる全ての人物や場所に電話をして「タエコはいないか」と尋ねました。 12才、弟は9才でした。 すぐに見つかると思っていたんですけどなかなか手がかりがなくて。そうこうしているうちに夏休みが始まって給食が食べられなくなったんですね。 これがけっこう辛かった。 ミウラさんは最初こそ真剣に捜そうとしていたようですけど、すぐに遊びのほうが楽しくなったのか近所のスナックに入り浸りで私たち姉弟には興味がなさそうでした。 家にあったお米などを食べつくしてしまった後は友だちの家でご飯をごちそうになったりしていました。タエコさんが失踪したのは近所中が知っていたし、まだあの時代は良い意味でおせっかいな人たちがいましたから1日1食分ぐらいならなんとかなりました。 でも私と弟との2人分の食事ですからだんだんとこっちも行きづらくなってしまって。 それで近所の商店で万引きをして弟と2人、なんとか食い繋いでいました。 いま思えばあの商店の店主は私が万引きしていることは気付いていて、それでも事情を知っているから見逃していてくれたのかもしれません。感謝しています。 そう言って笑ったアヤミの目元は少しだけタエコに似ていた。
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