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アヤミに幼少の頃の思い出などを聞いてみた。
「思い出ですか?うーん、あんまりいい思い出はないんですけど」
少し上を向いたあとアヤミは語る。
小さな頃から可愛げのない子だったと思います。裏表があって。
私の親はスナックに子どもを連れて行くような人たちで、私はその猥雑な雰囲気のなか親の顔色を見ながら行動する子でした。
こう言っておけば問題ないだろうとか、この人には秘密の話題なんだろうとか、とにかくいろんな事に考えを巡らせて素直な気持ちや本当の事は言わない子でした。
それは親もわかっていたはずですが「嘘が悪いこと」だと躾られたことはありません。
むしろ「とっさに嘘をつける=機転の利く子」だと喜んでいたふしがあります。
なので嘘をつくことを躊躇うような人間にはなりませんでした。
それとミウラさんはよく物を盗む人でした。子どもは親の姿を良く見ていますからね、わかるんですよ。スーパーなどに行くと特に欲しそうでもないような品物をすっとポケットに入れたり袖口に入れたりするんです。
そういう場面が日常に多くあったので、善悪が云々より「すごい!手品みたい!」っていう気持ちになりました。
なので盗むのが悪いことだと知るずっと前から欲しいものは盗めばいい、見つからなければいいって思っていました。
「小さな物ならこうするんです」
そう言ってアヤミは手元にあったスティックシュガーを何本も器用に袖口に入れ始めた。
もちろんその後テーブルに戻したが。
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