暴言 アヤミ

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アヤミは1才になる以前の事も憶えているという。 1番最初の記憶は峠道です。左が山肌、右が絶壁の。 後部座席でオムツを替えていたんでしょうね。車の天井を憶えています。 そしてタエコさんの悲鳴とミウラさんの怒鳴り声。次の瞬間、崖下の海が見えました。きっと脅しで本気ではなかったと思いますが、ミウラさんは私を海へ放り出そうとしていました。 それが1番最初の記憶です。 だけど自分が何才の頃の記憶かが曖昧で、一度聞いたことがあるんです。 「こんな色の車で雨の峠道を走ったことがあるよね?」って。 タエコさん驚いてました。 まだ生後半年余りの頃の出来事だそうです。 おそらく本当の記憶でしょうね。 その後の記憶も断片的なんだとは思いますけどあるんです。 最初の記憶がそれではあまりに切ない。 聞いていいものだろうかと躊躇ったが、父母の事で憶えていることがあるなら教えて欲しいと言う私に 「いいですよ。そんなに面白い話ではありませんけど」とアヤミは笑った。 笑ったあと小さなため息をついていた。
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