恐怖のエッセンス -お弁当-

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「唐揚げよこせよ!」 いじめっ子三人組が、彼女の弁当からおかずを奪った。 ◇ それはいつもの光景だった。 どこにでもあるような地方の公立中学校。 どこにでもあるようないじめ。 私のクラスの優子さんは父子家庭。その父親も病気療養中ということで、祖母の家に預けられていた。 彼女はその境遇に引け目があるのか、引っ込み思案で大人しく、いつの間にかいじめのターゲットになっていた。 いじめているのはクラスの女子三人組。無視や言葉の暴力が優子さんに向けられていた。 それでも彼女は困ったように微笑むだけで、弁当のおかずを取られるのも日常だった。 そんなある日、優子さんは引っ越すことになった。祖母が亡くなり、別の親戚の家に預けられるという。 私はいじめのターゲットになりたくない臆病者だったので、いじめについては静観はしていた。でも内心彼女を応援していたから、次の場所がいいところだったらいいね、と彼女が引っ越す前の日に声をかけた。 優子さんはありがとう、と言い、思い出したように私にあるものを渡してくれた。 それは封筒だった。なぜかあのいじめっ子三人組に渡してほしいという。 わざわざいじめっ子に手紙を渡すのも妙だとは思ったけれど、その表情が真剣だったのでそのまま封筒を受け取ることにした。 彼女が引っ越した後、私はあの三人組に封筒を渡した。 いじめていた相手からの手紙に、彼女達は一瞬驚きの表情を浮かべたものの、すぐに興味津津といった感じで中身を読み始めた。 手紙を読んでいる途中だった。三人は顔を見合わせた後、いきなり教室で嘔吐した。 その翌日から、何故か三人とも学校には来なくなり、今どうしているかは私も知らない。 ◇ この話には後日談がある。 優子さんが引っ越した後、ある噂話が静かに広まった。 祖母の遺体は優子さんの家で見つかったものの、死後かなりの時間が経っているようだった。 優子さんは、実は祖母の年金を受け取り続けるために遺体を隠していたんじゃないか……。 でも、それだけでは説明できないことがある。 遺体から、かなりの肉が削られていたらしいのだ。 実は私はその理由を知っている。 何故なら…………あの手紙を、こっそり読んでしまったからだ。 ◆ 弁当のおかずを盗むいじめっ子…… 三人組を嘔吐させた手紙…… 遺体から削られた肉…… あなたには 真実が 見えましたか?
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