1章 私のご主人

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そうですよ。 彼は私の旦那様です。 え?顔は…面長ですこと。 目?タレ目の二重。それに反して眉は太くキリッとしてますよ。整えていらっしゃる様で美しいカーブです。私の伸びっぱなしの眉毛とは違いますね。 口は少しポテッとしてます。 ひゃぁ!また、唇来たぁ! 食べられる!はっ!大きいですお口! 食べられ!あぶあぶ! 口大きいからキスすると唇やらその周辺食べられてる気がして怖い。 「んーんー…………ぷっはぁぁっふぇぇぇっ」 私はニートなので、非力でしてそれでも厚い胸板を、どうにかこうにか押し返し、やっと大きな唇は離れてくれました。 「ただいま」 何事もなかったかの様な爽やかな笑顔。 「ふ……ふへぇっふぇっお、おきゃえりなしゃいましぇぇ」 「いつも言うけど、そんな畏まって言わなくていいんだ。お帰りだけで嬉しいよ」 「で、でも、旦那様ですから」 私は目の前の高級なスーツを身に纏う旦那様を見れず、自分の貧相な足を隠すスウェットを、握り下を向いた。 「クスッ可愛いな」 なぬ?!まだ言うか! 「か、可愛くない」 「可愛いのにな」 可愛くないのに……私なんて。 そう彼にあったのは雨が止んだ後のコンビニ帰りでした。 数日分のウィダーを手に私は家へと真っ直ぐひたすら真っ直ぐ帰っていたのです。 道端に大きな水溜まり。 目の前からは高級そうな車。 私は端に避けました。 すると、やはりこんな狭い道ですから、端に避けたとしても水溜まりをタイヤで弾いてしまって、私にかかり全身濡れてしまいました。 すぐに車は止まりました。 珍しいですね。皆知らんぷりで行ってしまうのに。 「すみません!大丈夫ですか?いや、あっどうしよう。クリーニング代請求してください」 車から出てきた長身の美丈夫は名刺を手慣れた手付きで出してきた。 「い、いや、いいです。す…ウェットですし。洗濯すれば何も起こらなかったのと同じです。では」 私は久しぶりの外の人との会話で内心どぎまぎしながら受け答えして直ぐ様去ろうとした。 「いや、でも」 美丈夫さんは私の手首を掴みました。 「……細っ」 「お金、請求、しない……離して」 まるで、ロボット。私はロボット。何このロボットみたいな口調。 「え?ごめん。髪まで濡れてる。本当にごめんね」 彼は私の髪の水滴を高級そうなハンカチで拭ってくれました。 「うわっ……可愛い」
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