プロローグ

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「ごめん、俺達……別れよう」 「え……どうして……?」 「なんか……思ってたのと違うんだよね」 「思ってたのと違うって、まだ付き合って一ヶ月だよ?」  大好きな春が近づき、桜が咲いたらお花見をしようと話したのはつい昨日のことだった。それが一変、日付が変わっただけなのに、私達は別れ話をしていた。  頭がくらくらする……彼の言っている意味が分からない。私は私でしかないのに。 「もっとサバサバしてると思ってた。仕事してる姿がカッコ良くてそんな葵に惚れたんだけど、付き合わない方が良かったかもしれない」 「何それ……。」  春は大好きな季節なのに、彼は私が楽しみにしている隣で頷きながらも、頭の中では別れることを考えていたんだ。するつもりのない約束に、頷いていたの? 『イメージと違ったな』  彼がよく口にしていた言葉。呑気な私はそれを良い意味なのかと思っていた。実際は逆で、彼のイメージとは違いすぎた本当の私は、このまま付き合っていけないとフラれてしまった。 「……好きだったのに……。」  彼の誕生日で悩んで選んだプレゼントは、そのまま持って帰れと言うように渡された。まだ別れたことが嘘のようで、気持ちが追い付かない。  溢れてくる涙はいくら拭いても止まらなかった。 「痛っ!!」  右足のかかとに痛みが走り、靴から足を浮かして見れば靴擦れを起こしていた。赤くなり皮がめくれた、かかとが痛々しい。 「バンソーコーあったっけ……。」  この靴気に入ってたけど、やっぱり少し小さかったんだ。無理して履いていたから……。  自分にぴったり合う靴は、なかなか見つからない。
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