初稿

8/10
前へ
/10ページ
次へ
結局この騒動で家の外に出るはめになったので外気で目も冴えてしまった。姉さんを迎えに行こうよ!と釘に促される。 仕方なくスマホで「迎えに行く」とメッセージを送ったが即座に「来なくていい」という返答が戻ってきた。それっきりだ。 女の子がひとりで夜なんてあぶないよ!と釘が騒ぎ出す。釘のくせに一般常識がある。その声に促されるように、永治は智世を探しに行くことに決めた。 4. 『犯罪に巻き込まれてるかも!』 心配性な釘の声に従い、永治は工房に寄って武器を調達する。お手製の釘バットだ。 智世の居所は分かる。釘の声が教えてくれる。 永治の足は見覚えのある住宅街へ向かっていた。驚くぐらい多くの釘の声が聞こえる。深夜の閑静な住宅街は、もはや昼間の雑踏だ。 住宅街の端に目的地はあった。実家のあった空き地。火事から半年経つ。今はもう何もない場所。その前に姉がうずくまっていた。 そして、その傍らにはひとりの男! 永治が釘バット構えて声をかけると男の方は逃げてしまった。 「あの人、心配して声かけてくれただけなのに」 「不審者情報があるって言っただろ」 「永治くんの方が不審者だよ……」 釘バット見て智世は引いている。姉が全面的に正しい。 「なんでここが分かったの?」 「釘が教えてくれて……」 「ん?」 姉の顔が怪訝そうに変わる。永治は一瞬目を泳がせた。     
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加