初稿

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「勘」 言い直したあと、やっぱりもう一回言い直す。 「家族だから」 とっさに出たでまかせ。そう言うと姉は泣き出した。 泣かせた!と釘が騒ぎだす。 「あの人、そんなこと言ってくれなかった」 それから姉は義理の両親から受けたいじめについて話してくれた。離婚の原因。話が長いので仔細は省略。あんまりにも話が長すぎて永治は釘バットを支えに座り込む。 ……このつらい離婚話の一部始終を聞いて、釘が口を開いた。 『呪おう!』 釘が恐ろしいことを言い出した。 「呪おうって、お前な」 おそらくは五寸釘を刺している。藁人形?時代錯誤だ。 「呪おうなんて」 永治のつぶやきを受けて姉が笑い出した。 あ、これこのままいくと呪うことになるな。永治は察する。なんせ自分たちが手ずからつくりあげた釘だ。市販の釘より威力は出るだろう。釘バットに刺した釘たち本人だって、やる気満々なのだ。 でも。それは違うと思った。 「釘で人を呪うこともできるだろう。なんなら直接的に傷つけることだってできる」 不審者撃退で姉にレクチャーしたやり方も思い出しながら。 「でもお前たちをそんな風にするために作ったわけじゃない」 釘バットに向けて永治は声を荒げた。     
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