ちっちゃな天使

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ちっちゃな天使 No.5 返事をしたかしていないかも覚えていないけど、何やら説明をされて白い用紙にサインをした事だけは覚えている。 「みな実は、みな実もお腹の子も大丈夫ですよね?」 雄飛の気の無い声に 「大丈夫ですよ。少し外に出てもらえますか」 握ってくれていた雄飛の手が私から離れていった 背中の注射も痛いって聞いていたけどその痛みも感じないくらい意識が遠くなりそうで 気がつくと近くにきてくれていた雄飛に酸素マスク越しに 「怖いよう」 と言った。 「安心して。ずっと俺がいるから。優秀な先生方もいるから大丈夫。 俊ちゃんもいてくれてるよ。 もうすぐ赤ちゃんに会えるから、もうちょっと頑張って」 両手で私の右手をぎゅっと包んだ。 天井や周りを見渡すと恐ろしく怖くなる。手を握ってくれていた雄飛と目を合わせた。 そして 暫くして 「1人目出ます」 また暫くして 「もう1人出ます」 と言った声が聞こえた気がした。 私を見ていてくれた雄飛の目線が何かを追っている事が分かった。 雄飛の目から大粒の涙がポトポトと落ちたのを見て赤ちゃん達が運ばれていったことがわかった。 入院した時からずっと私を励まして近くにいてくれた助産師さんが 「おめでとうございます。2人とも女の子ですよ。頑張られましたね」 顔のそばまで来て教えてくれた。 遠くで、か弱い赤ちゃんの泣き声が聞こえた。 「聞こえたね、赤ちゃん達の声…」 ふーっと安堵する私に 「ありがとう…みな実…2人とも女の子だって…ぅぅ…」 あー、産まれたんだ… 夢じゃないよね。 「雄飛、産まれたね… 赤ちゃん達は元気かな?2人とも無事?」 話していると兄が来て 「おめでとう。2人ともちょっと小さいけど肺がしっかりしてるから大丈夫だ。元気な女の子達だよ。雄飛、後で会いにおいで。みな実も落ち着いたらね」 そう早口で言ってサッと行ってしまった。 "元気だよ" その言葉だけで十分。 涙が溢れた
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