4

1/2
前へ
/9ページ
次へ

4

 莉子は部屋に入るとすぐに文庫本の本棚の前に行き、本を取り出すふりをして本棚をひっくり返す。陽太という被害者の男は慌てて駆け寄ってきて、本を拾いだしただろう。  莉子は被害者に気付かれないよう、倒れて空になった本棚を抱え上げ、背後に回ると、本棚の角で狙いを定めて被害者の頭に振り下ろす。  非力な女だし、大きい割に軽い本棚だから、致命傷にはならない。驚いて振り向いた被害者にさらに本棚を振り下ろす。そして弱った被害者にとどめを刺すためにさらに、さらに二度、三度と本棚の角で頭を打ち付けた。  被害者が死んだのを確認した後、莉子は本棚にあった文庫本を元のようにきちんと片付ける。血の付いた物は細かくしてトイレに流した。もちろん被害者を殴った本棚の血はきれいにぬぐい取った。  莉子は被害者を殺してすぐに人を呼べば、自分が殺したことがばれてしまうが、一時間ほど時間を置けば自分が殺したのではないという言い訳が通ると思っていた。  莉子の供述は刑事の考えとほぼ一致した。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加