第2章

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心配された天候も崩れることなく、恙なく球技大会は進んで行く。 そして昼休み、午前の部を終えた生徒たちはそれぞれ思い思いの場所で昼食を取っている。 麻美や透たちは学食に出向いていた。暗黙の了解なのか分からないが、この日に限ってその場所を占拠できるのは麻美たちのような種類の人間のみのようだった。智と伸二はもちろんそこには行かない。別に来るなと言われたわけではないけれど、そこには見えざる力のようなものが働いているように彼らには思えた。 体育館裏はこの時間帯大きな影となっているので、彼らはそこで昼食を取っている。体育館の両サイドに設置されている鉄製の扉の下にある小さな階段に腰をかけて2人して弁当をつつく。 「いやぁ、やっぱりうまいね、松田君は」 卵焼きを口に放り込みながら伸二がそう言うと、智はペットボトルの茶を口に含んだ。 「そんなことはないでしょ。小学生の頃もそこまでうまいわけでもなかったし」 「でも、やっぱり経験者って言うのは大きいよ。僕も何かやっておいたらよかった」 「新山君はその分青春してるじゃないか」 「青春って?」 伸二が首を横に傾ける。 「いや、辻さんだよ辻さん。あれからどうなってるの?」 智が白米を口に運びながら尋ねると、伸二の顔は分かりやすく赤くなる。 「まあ、ぼちぼちってとこかな…」 「ふーん、いいねぇ」 一足先に食べ終えた智が空の弁当箱を片づける。体育館の中からはそんな智よりもさらに早く昼食を終えた生徒たちがボールを使って楽しく遊んでいる声が聞こえてくる。
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