第2章

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球技大会には、その種目の部活に所属している人物でも参加することができるようになっている。 つまり、このソフトボールという種目にも野球部員やら女子ソフトボール部員の参加が認められているということになる。 智のクラスには野球部員は一人いたが、彼はバレーボールの方に参加した。ソフトボール部員はもともとクラスにはいない。つまり、智のクラスのチームは、智以外はほとんど経験がないもので構成されている。 対して、今回の対戦相手のチームには野球部員が一人いる。どういう経緯があって彼がソフトボールに参加しているのかは知らないけれど、この時点で智のチームは圧倒的に不利である。 しかし、そのハンデを補って余りあるほどの活躍をする人物が一人いる。もちろんそれは一ノ瀬透である。 絶対にどこかでやったことがあるだろうと疑いたくなるほどの綺麗な投球フォームから繰り出されるキレのあるボールは、次々にキャッチャーの智のグラブに収まっていく。 明らかに不利な状況でのスーパースターの大活躍。これほどまでに画になる光景があるだろうか。バッタバッタと相手打者を打ち取って行く透の姿に、当然クラスメイトからの黄色い声援が飛ぶ。 「やっぱ透ってすごいね」 「運動もできるし、かっこいいし…。ホント憧れちゃう」 向こうのチームの攻撃が終わってベンチに戻って行くと、その後ろで声援を送るクラスの有象無象の女子達がそんな声を上げる。もちろん、本人が近くにいるときにこんなことを言えるわけがなく、今透はバッターボックスに入っている。 「ま―つだくん」 ベンチに腰をかけ、戦況を見守っていると、背後から何故か聞きなれた声が智にかかった。 振り向くと香織が女子達との会話を打ち切ってこっそりと智に近寄ってきていた。
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