第2章

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試合は投手戦となり両チームに全く点が入らないまま進行していった。 球技大会は特にイニングが決まっているわけではなく。1時間という時間の中で決着がつけられるルールとなっている。校舎に掲げられている時計に目をやると、そろそろその時間だ。おそらく智のクラスによる次の攻撃で最終回となるだろう。 その最終回もあっという間にツーアウト。そして、打席に向かうのは智だった。 この瞬間、ベンチの雰囲気が変わる。ああ、もうここで終わりだなという空気にどうしてもなる。 この試合、智は全く活躍できていないわけではない。現にヒットも1本放っている。 しかし、やはりその人間の持つ空気感というのだろうか。この人はどうにかしてくれるという感じが智からは全く感じられないのだ。 智が右打席に入る。ふとベンチを見ると、クラスメイト達はもはや試合には興味を示しておらず、友人どうしのおしゃべりに興じていた。その中でひときわ大きな集団の中心にいるのはやはり透だった。 女子に囲まれて楽しそうに話をしている。そして、それに群がる金魚のフンのような他数名の男子。 いかに、見慣れた光景とはいえ、さすがの智も少々げんなりした。 (何ぼーっとしてんのよ!) そんな時だ。いつもの聞き慣れた声。今となっては心地よい波長の声が彼の脳内に響き渡った。しかしその日の彼女の声は波長こそ変らないもののその振幅はいつもの2倍くらい大きなものだった。
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