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球技大会の後の打ち上げを計画してくれたのは香織だった。それだけに麻美は余計に申し訳ないと思った。
それなのに、なぜ私は打ち上げに行くのを断ったのだろう。彼女にとって自分自身のことがよくわからないということはあまり経験がなかったので、戸惑いがあった。
しかし、頭の中で智と話しているうちに、そういういろいろなことを考えることが急に煩わしくなった。
まさしく今、正門から出て家路につこうとする彼女の横を自転車に乗った生徒たちが追い抜いていく。
その風を感じながら、彼女はひとつ息を吐いた。
(なんかもう馬鹿らしくなっちゃった)
どこか吹っ切れたように麻美は脳内でそうつぶやいた。
(何が?)
(なんかもう…いろいろ考えることが…)
(そうなんだ)
(何他人事みたいに言ってんの!)
(え?)
智が驚いたような声を出した。当たり前だ。はっきり言って麻美がどう考えているかなんて彼にとって他人事でしかないのだから。
でも、彼女がそう考えるようになったきっかけは間違いなく智だった。だから、彼女は智の言葉に少しだけ腹が立ったのだった。
麻美はもう一度だけフッと息を吐く。そして、なんとなく空に広がっている青色を見上げた。
(ごめんなさい)
彼女が言い終わるか終わらないかくらいのタイミングで、彼らの脳内でプツンという音が鳴った。どうやらちょうど交信が終了したようだった。
なんだか恥ずかしい気持ちになった麻美の顔はどんどん赤くなる。
どうして自分はあんなことを言ったのだろう。
そもそも、どうして自分はあいつに怒ったのだろう。
さっきまでの自分の中の戸惑いがさらに大きくなったことを感じながら麻美は再び帰り道を歩き始めた。
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