第2章

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理沙は何も意地悪くこんなことを聞いているわけではなく、本当に心から疑問に思っていることをそのまま智に問うているのだ。智もそれがわかっているからこそ、適当にはぐらかすことができないようだった。 「僕もものすごく得意ってわけじゃないから偉そうなことは言えないけどね。数学ってそういうもんだと思うよ。何かの定理に行き着くにはたとえ間違っていても仮説は立てるだろうし」 智の言葉に、理沙はどうにも納得できかねないといった表情を浮かべる。何に対しても及び腰だと思っていた彼女は、智が思うよりも頑固な一面を持っていたようだった。 ふと智が教室の前に設置されている時計を見上げる。 「もう6時か」 「え?もうそんな時間…」 どうやら理沙の方は完全に時間を忘れていたらしかった。さっきからチラチラと時計を見ながら教えていた智とは違い彼女は勉強中一切時計の方を見ない。そんな彼女の様子を見ていると、おそらく彼女は勉強の仕方さえわかればもっとできる娘なんだろうなと智は思った。
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