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学校に来て、授業を受け、伸二とだべり、放課後は理沙と勉強会をして一緒に下校をする。ここ数週間はこのルーティーンの中で智は学校生活を送っていた。もちろんその中で1日に1度の交信の時間は必ずやってきたが、相変わらずどのタイミングでやってくるのかはよくわからなかった。
行き交う車を左に見ながら、彼らは国道沿いの少しだけ暗くなった道を肩を並べて歩く。当初はお互いに作り出してしまう沈黙に耐え切れず智がおかしなことを口走って、余計におかしな雰囲気になるということもしばしばあったけれど、ここ最近ではその沈黙自体に2人とも慣れてしまったようだった。
「そういえば、頭は大丈夫ですか?」
明らかに言葉足らずであることに自分で気付いたのだろう、理沙は顔を赤くして首を小さく横に振る。
「頭の痛みは大丈夫ですか?」
智は少し笑みを浮かべながら理沙のそんな様子を見つめている。ここ最近、彼女が見せる至らない部分というのが妙に可愛らしく感じるようになってしまっているようだった。
「もう結構前のことだから、大丈夫だよ。ていうか、会うたびにそれ聞いてない?」
自分でもちょっと意地悪なことを言っているという自覚はあった。しかし、理沙の少し困った顔を見たいという若干イケナイ願望にとらわれた智の口角は自然とわずかに上がっていた。
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