第2章

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(そういえばさ、球技大会の時) 智は言った後少し後悔した。話題を転換させるための話題として、これが本当に適切なのかわからなかったからだ。しかし、一度口をついて出た言葉をもう一度引っ込めることはできない。仕方なく言葉を続ける。 (その日の交信の最後にごめんなさいって) (別に言ってないし) 食い気味で否定された。しかし智にはこれくらいの反応は想定内だった。 (いや、まあそこは良いとして、僕も遠山さんに言っておきたいことがあったんだよ) 智はなんとなくベッドから身を起こした。そして、ひとつ小さく息を吐いた。 (ありがとう) (…何が?) (一生懸命やんなさいって、言ってくれただろう?確かにあのとき僕が一生懸命やってたかって言われるとそうじゃなかったと思うから) 麻美の顔が少しだけ赤くなる。そして、彼女は勢いよく顔からベッドの枕に飛び込んで、その中に顔を埋めた。 (別に…私は見ててイライラしただけだから) (わかってるよ) 笑いながら智は答えた。麻美はなおも不機嫌そうにふんと鼻を鳴らした。
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