第3章

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「夏休み、何しよっか」 放課後の教室、部活動に精をだすべく教室を飛び出していくクラスメイトを横目に、目の前の香織が言った。 「これぞ夏ってことやりたいよね」 「それ去年も言ってなかった?」 「そうだったっけ?まあ、細かいことは良いじゃない」 早くも浮かれ気分といった感じの香織が、麻美の右肩をポンポンと叩く。透はすぐに部活に行ってしまったのでこの場にはいないが、いつもよく話している同級生が彼女ら2人の周りに数名いる。 「麻友は彼氏がいるから忙しいよねー」 麻友と呼ばれたその同級生は、香織のその言葉にどこか恐縮そうに肩を縮める。 「え、えっとごめんね…。もちろんみんなの方にも顔は出すからさ」 香織は軽快に笑いながら今度は麻友の肩をポンポンと叩いた。 「気にしなくていいって!そこは彼氏の方を優先しなよ。私たちと遊ぶのは出来る時でいいから」 香織の明朗なその声に、他の女子も同調したように「そうだよー」とか「羨ましいなー」といったような言葉をかける。場合によっては麻友が妬まれるような場面になりかねないが、こういうところが香織のすごいところだと麻美は常々思っている。自分にはなかなかできないことだから。
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