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時間を止めたことで、あの頃と変わらない。
ここはかつて架南が愛した花畑だった。
…躊躇いはもう、ない。
飛びかかる闇人をそのままに要は瞳を閉じる。
瞬間、地面を割り水柱が噴き出した。
壁ができるほど大量に頭上高く噴き出した水が、闇人たちの上へと降り注ぐ。
闇人たちを飲み込み濁流となり暁華へと向かうが、暁華は慌てることなく祥吾を捨てた。
即座に木立の合間に退避する動きからも、流れを読んでいることがわかる。
要はそのまま祥吾の身体も流れに取り込み、己の背後へと誘導した。
水が引いたあとにいくつもの体が地面に横たわり、宙に浮く水球の中には無数の黒い塊が蠢いた。
闇を離すだけでは、再び暁華に操られてしまう。
水球の中に閉じ込め、封じ続けなければ…
暁華は恐らく、それも見越している。
見越した上で、次は。
要は肩を上下させ、乱れた息を繰り返す。
押し寄せる疲労感に地に手をついたまま、動けない。
能力を使い過ぎた上に、水球の維持、余力が少ないのだ。
気づけば、すぐ近くまで暁華が歩み寄っていた。
手には、打刀…
鞘に見覚えがある。
「貴様の首を落とし、肋を折ってくれたあの女に生首を抱かせてやろう…」
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