第1章 夢と恋情

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【 要と祥吾 】 「よぉ、ナイト君」 ボサボサ頭を掻きむしり祥吾が大きな欠伸をしながら声をかける。 「今日も姫の警護かい?」 「それは祥吾さんの役目でしょう…」 部屋の鍵を閉めながら要はそれを一瞥し、吐き捨てる。 「俺は警護じゃなくて、見張り。要くんみたいな抜群の運動神経ないからね」 「煙草と酒と加齢のせいですかね」 「痛いところつくなぁ」 歩き出そうとする要の進路を阻むように立ち、祥吾は煙草に火をつける。 6階建てのビルの3階、人気の無い広い廊下で二人対峙する。 3階ワンフロアに3室あるが要しか住んではいない。 「何か用ですか?」 そこにわざわざ来ているのだから、何かあるのだろう。 差し当たって… 「…葵さんの件ですか?」 眉をしかめる要を斜めに見やり、祥吾は煙を吐きながら口を開いた。 「もう関わらないとか言いながら、気になる訳だ」 「関わらないではなく、接触しないと言ったんです」 「接触ねぇ…」 煙草の煙をわざと吐きかけられて要はムッとする。 「だから、お願いしますよ、警護」 祥吾の横をすり抜けて要は階段へと向かう。 「じゃあ、俺が、俺のやり方で接触しまくってもいいんだな」 そんな要の背中に祥吾は問いかけた。 「俺がちょっと接触しただけで、あんなに嫌がってたのに、いいのかなぁ」 歩みを止め、ゆっくり要は振り返る。 「警護、と言ったんですよ」 瞳を細め、祥吾に冷たい視線を向ける。 「それ以上でも、以下でも無い」 言い放ち、階段を下りる。 駅のホームで遭遇したのは偶然だった。 喫茶陽だまりの前で祥吾に絡まれているのを見て、仕方なく接触した。 図書館へは自分から会いに行った。 確認する必要があると考えたからだった。 だけど、これ以上の接触は危険過ぎる。 だから会わないほうがいい。 図書館での一件があってから3日経つ。 平穏に暮らしていけるなら、それがいい。 (…それでいい)
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