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「家とか知らないし、こうするしかなくて」
「会ってどうすんの?」
「確かめたいことがあるんです」
「どんなこと?」
「それより…」
葵は祥吾に掴まれたままの腕を上げ、拗ねたように睨み上げる。
「この手放してくださいっ」
「ああ、ごめんごめん。掴まえておかないとさ、ちゃんと話しもできないから、癖だよ、癖。君は昔から俺を見ると逃げるから」
手を離す気配もなく、祥吾は「あはは」と笑った。
(…昔から?)
「祥吾さん、もしかして…私と祥吾さんは前世で繋がりがあるんですか?」
繋がりがあるのなら、何か知っているのかもしれない。
「前世が気になる?」
そう聞かれて、ピンとこなかった。
前世が気になると言うより、気になるのは…
だけどそれは前世が気になると言うことなのか??
「…前世があるとしても、全部を知りたい訳ではなくて」
「都合のいい話だね」
おずおずと答える葵に、祥吾が言い放つ。
「知りたいことだけでいい、他は知りたくない。知りたいことだけ教えてぇ、ってさ」
祥吾の笑みが消えた。
「覚悟なく首をつっこまないほうがいいよ」
言いながら葵の手を放す。
「んじゃ、そう言うことで」
ヒラヒラと片手を振りながら祥吾が背を向ける。
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