第6章 別れの追憶

14/30
前へ
/298ページ
次へ
【 対敵 】 「かぁごめ、かごめ…」 中庭から花のような歌声が聞こえる。 「籠の中の鳥は、いついつ出やる」 子どもたちの笑い声が混じる、明るい陽だまり。 「夜明けの晩に、鶴と亀が滑った…」 海斗は渡り廊下で足を止め、中庭を見やる。 「後ろの正面だあれ?」 幼い子どもたちに混じり、今年10才になった少女が歌っている。 先日、総帥珠妃の命により海斗の許嫁に決まった少女だ。 総帥珠妃の娘、架南。 その様子を母屋の縁側に座り眺める少年と、膝の上には幼い女子。 少年が海斗に気づき、視線を投げてきた。 静かな湖面のような瞳。 海斗と目が合い、笑顔が消える。 まだ12才とは思えない落ち着きがある。 そして若干9才で強襲から母屋を守り抜いた能力者、蒼麻。 誰もが予想し得なかった結界の歪み。 突然の強襲に、結界に守られ自衛手段に欠けていた村人は簡単に惨虐された。 能力者たちは各々の判断で対撃、防衛、半数が兵数に敗け、首を狩られた。 戦闘において不慣れな者が多過ぎたのだ。 その中で、母屋に押し寄せた兵数をたった一人で… 水を操る能力者は少なくはない。     
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!

221人が本棚に入れています
本棚に追加