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秀でているのは能力の質ではなく、類稀な戦闘における天性の感。
(口惜しい…)
海斗は臍を噛む。
初めて顔を合わせた訳ではないが、言葉を交わしたことはない。
海斗に睨まれ、少年は眉をしかめた。
そんな少年と海斗の間に架南が割って入る。
「蒼麻、聞こえてるのか?」
機嫌を損ねた架南の声。
「どこを見て…」
架南が振り返りそうになり、海斗は歩を進める。
「何でもないよ」
柔らかな少年の声色が耳をかすめた。
少年の膝の上にいたのは暁華、あの強襲の日に生まれ、戦いで父親を亡くしている。
総帥の実子は生まれてすぐに乳母と父親の元へ送られるが、父親を亡くした暁華は異例の配慮で母屋に残ったと聞いた。
今はあの少年が片時も離れずにいるのだと、噂には聞いていたが…
総帥の息子、特化した能力、類稀な感性、名声、血を分けた兄妹。
全て持っている少年。
己の能力は一族の存続繁栄の為だけにあるようなもの。
その時が来るまで使う事も許されない。
その時が来るまで…
咳き込んで海斗は目覚める。
もたれるようにどこかに座っている。
気を失っていたらしい。
前世での夢は久しく見ていなかったが…
懐かしい夢を見た。
海斗が16になった春のことだった。
許嫁が決められたと告げられた日。
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