第6章 別れの追憶

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思えば、その許嫁の顔より蒼麻の目つきが印象深く記憶に残った日だった。 12才の蒼麻はまだ可愛らしい顔つきだが、その瞳だけは今と変わらない。 蒼麻と初めて目が合ったあの瞬間、何かが決まった(・・・・)ような気がした。 (あいつ…探してるのか…) こんなことになり、動ける人材は要しかいない。 だが、狙いに気づいているなら、元聖地は捨てるべきだ。 葵の安全を考えれば、あの建物(スローネ)から出ないことが得策。 (…捨てろ、俺のことも) だから、行かなくては。 祥吾はフラつきながら立ち上がる。 左脚は引きずれば何とか動ける。 左肩の脱臼に左腕骨折、あとは打撲か悪くてヒビが入っている程度。 思い通りになどさせてはいけない。 (刺し違えてでもやってやる) 祥吾は木々の幹に掴まりながらその間を進む。 (だから、来んなよ…蒼麻(・・)!)
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