第6章 別れの追憶

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【 憩い 】 見送った要の背中が目に焼き付いた。 気持ちがザワザワして落ち着かない。 「…とりあえず、コーヒーでも飲みましょうか」 満琉の声を背中で聞いて振り返ると、和希と目が合った。 和希が真っ赤になって唖然としている。 「…どうしたの?」 思わず葵が尋ねると、和希は焦ったように口元に手を当てた。 「…あ、いや、なんか、ほら…あいつがさ何か、らしくないっつーか」 「そう?割といつもイチャイチャしてるわよ」 口ごもる和希に満琉がさらりと言う。 葵は何のことを言われているか気づいて、頬を赤らめた。 (恥ずかし…っ) 二人の目の前であることをすっかり忘れていた。 「要はわかりやすいのよ。葵ちゃん以外にはツン、葵ちゃんにはデレ。タガが外れてからデレッデレ…」 やれやれと言わんばかりにカウンターの中で満琉は息を吐く。 「タガ?」 和希が顔を手で扇ぎながらカウンターのイスに座った。 「どこぞのバカが、襲ったり家燃やしたり誘拐なんかするから吹っ切れちゃったのよっ」 「ああ、なーる(なるほど)…」     
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